アクアイグニス
食と健康をテーマとした複合商業施設
2012@三重県菰野町
アクアイグニスの前身である旧片岡温泉は三重県湯の山温泉郷の麓にあり、登山者や地元民から愛された飾らない日帰り温泉施設であった。それが移転を機に食に関する施設を充実させて複合施設化するという。私の役割はすでに決定されていた骨格をベースに、コンセプトから施設構成、ランドスケープ、インテリアまでを総合的に検証し、リデザインすることだった。
コンセプト立案の焦点となったのは、メディアを賑わす有名パティシエや有名シェフの存在と銭湯のように日常的に愛されてきた日帰り温泉をどう関係づけるか。それと同時に、想定されている多様なサービスに軸を通し、発展性のあるフレームを構築する必要性も感じた。アクアイグニス(火と水)という施設名称はこの問題を解くプロセスで着想したものである。
火と水の庭園
火と水の庭園は水盤を中心として、アネックス、レストラン棟、イチゴハウス、ヴァレンタイン・ゲートで構成した屋外空間である。アクアイグニスとは水(アクア)と火(イグニス)をつないだ造語で、地下水と地熱による温泉や雨水と陽光を受けて育つ食物、あるいは男と女など、各コンテンツから導き出したイメージを抽象化したものである。そうしたコンテンツ群を空間的にまとめる存在として、火と水の庭園を位置付けている。