片岡温泉

アクアイグニスの中核を担う温浴施設

2012@三重県菰野町

片岡温泉は三重県菰野町で2012年に開業した複合商業施設、アクアイグニスの中核を担う温浴施設である。そもそもアクアイグニスのプロジェクトは高速道路建設に伴う旧片岡温泉の移設に端を発している。旧片岡温泉は銭湯のように地元の方々から愛されており、新設される有名シェフによる美食を求めていらっしゃる新たな顧客層とのバランスをどうとるかが課題であった。

竹林風呂 photo : Shigeta Satoshi(このページ全て)

ファサード

このプロジェクトへの参画時、すでに温浴施設の基本設計は完了しており、私の役割は建物形状や構造などの変更を最小限に抑えながらコンセプトから再構築することであった。ここでは、個性の異なるレストラン棟との連続性を火と水の庭園を媒介にして方向づけようと考えた。まずアプローチの引き込みを深くとり、縦長の庇と横長の展示出窓を設けてファサードを構成した。そしてそれらのディテールを手がかりに、水盤と親和性が生まれるようなシャープな表情を追求している。


エントランスホール

エントランスホールは広がりが感じられ、あちこちに散りばめられたフォーカルポイントが楽しい空間となっている。アプローチのボリュームや受付カウンターを媒介に、細部から全体まで有機的に関係しあって物語を語りかけてくるデザインを目指した。

照明、ベンチ:廣田尚子 | アート:ミヤケマイ


ショップ

エントランスホールとの境界が曖昧になるような形でショップを設けた。ファサードを構成する出窓はショップの展示スペースになっている。


館内施設

湯上がりを気持ちよく過ごせるよう、浮造の床や間仕切りのゆらぐガラス、カウンターのブロックなど、感覚を呼び覚ます素材感を大切にした。

浮造の床(現 笠庵)
間仕切り
マッサージ店舗(現存せず)
ライブラリ(現存せず)
カフェ
トイレ

湯上処

エントランスから続く廊下の先に、浴場への入口となる大きな暖簾が見える。その廊下に開かれた湯上処を設けた。火照った身体を休めてまどろみたい時、機械的なノイズは極力排除したい。設備を慎重にデザインし、瞑想的な空間を実現した。

廊下の先に浴場の入口となる暖簾が見える

ソファ・ベンチ:藤森泰司 | コロロデスク:トラフ | 暖簾・アート:ミヤケマイ | 器:赤坂知也


竹林風呂

竹林をイメージの中心に据えた。竹は密植して視線を遮っても、比較的太陽光を通しやすいので暗い印象になりにくい。また、風を感じやすく季節ごとの風情もある。露天風呂は3種類で、寝湯と桶湯は竹林を歩いていく。そんな体験もまたなかなか楽しい。

竹林風呂
掛湯と竹林風呂
外湯
内湯
掛湯
桶湯
寝湯
こんこんと湧き出る温泉